小説ブログ【愛しのメールアドレス第4話 あの世との交信】

 

小説ブログの書き方実例編【いとしのメールアドレス第4話 あの世との交信】をよんで、自分ならこう書くとイメージしてみてください。

自分は1話2000字前後を目安にして、一編の短編小説を6話で終わるようにしています。

短編小説の書き方のノウハウはネットでもいろいろありますが、実際に自作を発表して実例にしていることはすくないようです。

第4話 の世との交信あらすじ

詩乃が夫のリアナゲに赤ちゃんを身ごもったことを告げた翌日、コロンボの中心街でテロが発生した。詩乃は中心街に外出中だった。
今年も伸太の命日に同級生たちは仏現に集まった。
アイデアマンの聡史はあの世とこの世と通信ができるソフトウェアを開発中だという。

 

 

あの世との交信

 

メールアドレス

 

「ありがとう」
詩乃は聡史が送ってきたメールの表示されているパソコンの画面に向かって両手をサリー服の胸元に当て、当地風に軽くお辞儀をした。
すっかり喉の奥の棘は消滅していて心地よい午後だった。

いつだったか、聡史が夢のような電子メールのアドレスを送ってきた事があった。
彼が開発中のソフトが完成したら、このアドレスを使って、既にこの世からいなくなった伸太と交信ができるというのだ。

杉本―@universe.……
あれからだいぶ月日が経つが成功したとの知らせはまだ詩乃のパソコンの画面には届いていなかった。

もしそんな夢のようなソフトが完成したら今の気持ちを伸太に書き送りたいという衝動を押さえる事は出来なかった。

 

ごめんね。長い間、君の事を忘れていました。この国特有の強烈な熱帯の匂いに、今まで私の思考や感覚はしびれていました。

いま詩乃は花の名前は知らないけど原色の花園の中にいます。
赤や黄色、青の色彩に周りを囲まれていると今まで遠かった君が身近に感じられます。

スリランカは宗教の豊かな国です。
ヒンドゥー教やキリスト教も盛んですが日本人の私はやっぱり仏教に一番親しみが持てます。

先ほど黄色い衣の少年僧が数人、私の前を通って行きました。
出家した彼らの中に再び君を見た思いがして私の心は安らぎに満たされています。
もうしばらく待っていて下さい。
一年後、君の眠る故郷に帰って行きます。

 

メールを書き終えた詩乃は、キーボードから顔を上げた。
先ほど家政婦がそっと置いて行った紅茶を飲んだ。
心地よい冷たさの中で、このメールは必ず開かれるという確信がわき上がってくるのを感じた。

 

テロ発生

 

翌日、リアナゲが昼食を取りにビルの地下の食堂に降りて行くとレジの横に数人の人々が立ち停まっていた。
献立の入ったガラスケースの上に置かれたトランジスターラジオを聴いているらしい。

「コロンボの中心街でテロ発生」
女性アナウンサーが繰り返し報じている。
リアナゲは携帯電話を事務所においてきたのに気づき、反射的に人々の間をすり抜けて奥の小部屋の公衆電話に急いだ。

 

「出かけておられます」
電話口に出たのは家政婦だった。
「お昼にはお帰りになる予定でしたがまだです」

「赤ちゃん……出来た見たい」
胸元に顔を寄せうれしそうに呟いた昨夜の詩乃を思い浮かべながらリアナゲは地下室の階段を一気に駆け上がった。

 

会社のビルの前の道路はひどい渋滞だった。
リアナゲは車を諦め社員の自転車を借りて現場に向かった。
中心街に入ると走っている車は殆ど見られなかった。
道路は完全に封鎖されている。

「これより先は駄目だ」
銃を持った兵士がリアナゲの前に立ちふさがった。
「妻の安否を知りたい」
「下がれ!」
荷台に兵士を乗せた軍のトラックや救急車が目の前の道路をスピードを上げて走り去って行く。

 

「詩乃!……詩乃!」
リアナゲは立ち入り禁止のロープを握りしめ、遠くの崩れ落ちた瓦礫に向かって叫んだ。

 

同窓生

 

聡史はコンピューターソフト会社に勤務している。
同級生で大学院を出て就職したのは聡史だけだった。
気さくな青年で伸太の命日には毎年欠かさず顔を見せた。

「おい、聞いてくれ」
神妙な表情で仏前に手を合わせていた聡史は、手を合わせ終わると膝の向きを変えるなり、テーブルの前の数人の同級生たちの顔を見渡しながら透き通った声を上げた。

「また、何か発明でもしたのか」
「そう、その通りなんだ」
「どんな発明だよ」
同級生の一人が聡史の方に肩を寄せて興味を示すと他の同級生たちも大きくうなづいた。

「おじちゃん、おばちゃんも一緒に聞いて下さい」
聡史が首を伸ばしながら言った。

 

同級生たちが仏間のテーブルを囲んで賑やかにやっている時は、伸吉とトモは台所でボリューム下げたテレビを観ている事が多い。
測量会社に勤務する学二はこの時期、残業に追われて彼らと顔を合わせる機会は滅多になかった。

 

聡史は会社でも特異なアイデアの持ち主として注目と期待をされているようだ。

夜になると独りでに灯明の灯る墓。
やがて墓石の中から厳かな念仏が聞こえてくるという優れもの。

電源は墓石の頭に取り付けた太陽電池パネル。
墓石の下の納骨室には携帯電話とボイスレコーダーがセットになって置かれ、家から携帯電話にダイヤルすると、ボイスレコーダーの電源がONになって念仏を唱え出す。
家の仏前で念仏を唱えている時間に遠く離れた墓前でも念仏が上げられるという実に有り難いアイデアだった。

 

 

自動念仏機という製品名で既に実用新案も申請しているとの話だ。
「僕は今、霊とも交信できるソフトを開発している」
聡史は缶ビールを一口飲みピーナツをかじりながら一同を見渡した。

「霊って、何?」
「魂だよ。目には見えない不思議な物体。肉体を離れても宇宙に存在し続ける物体。それが霊」

聡史は少し早口の甲高い声でしゃべりつづけている。
普段はもっと静かでゆっくりと話すのだか、熱がはいりはじめると話しのスピードが早くなる。
こんな話し方をするのは心を許し合える同級生の前だけだろう。

「死んだ人間とも交信できるのか?」
伸太と一番の仲良しだった徹(とおる)がたずねた。
「霊感感応ソフトが完成すればそうなる」

 

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