小説ブログ【愛しのメールアドレス第6話 ごめんね】

 

小説ブログの書き方実例編【いとしのメールアドレス第6話ごめんね】をよんで、自分ならこう書くとイメージしてみてください。

自分は1話2000字前後を目安にして、一編の短編小説を6話で終わるようにしています。

短編小説の書き方のノウハウはネットでもいろいろありますが、実際に自作を発表して実例にしていることはすくないようです。

最終章 ごめんねあらすじ

伸吉とトモは設定を終えたノートパソコンを納骨室に置いた。
いまは霊魂となった伸太が果たして両親の期待に応えてノートパソコンに反応してくれるか。

 

ごめんね

 

言葉選び

 

家から歩いて五分ほどのところにある墓地は、孟宗竹に囲まれていた。
東に面した一角だけ視界が広がっている。

伸太の逝った後に完成した四車線のパイパスが集落を南北に分断している。
バイパスが出来る前までは墓地の高台からは日向灘の海面が青々と見えていた。

「霊魂がいるのなら反応を示すかも知れない」
墓石に水をかけながら伸吉は呟いた。
「示してくれるわよ」

トモは花立てのしおれた花を取り替えマッチを擦って数本の線香に火をつけた。
「納骨室には伸太だけではない。先祖たちが何人も眠っている」
伸吉は墓前に手を合わせ今から二人が実行しようとしている作業が成功するように
と願った。

「おじいちゃんやおばあちゃんも懐かしいけど最初は伸太に反応してもらいたい」
囲いのブロックの目地に伸びた雑草を引き抜きながらトモはしんみりとした声で言った。

「一番初めに、どんな言葉を書こうか」
と手を休めないで言った。
「ごめんね……それだけでいい」
「初めからお詫びの言葉か」
「まだそれしか覚えてない。一生懸命やってるんだけど」

伸吉も初めはお詫びの言葉を選ぶだろうと思ったが妻の前で弱気なところは見せたくなかった。

伸吉は太陽電池の支柱を墓石の東南側にくっつけるようにして立てた。
晴れてさえいれば一日中、太陽光が降り注ぐ。
「ここを開けるのは、伸太を納骨した時以来だ」

 

墓石の裏に回り、神妙な声の伸吉は納骨室の石蓋を取り外した。
中からヒンヤリとした空気とカビの臭いが一緒に流れ出てきた。

トモは腰をかがめて納骨室をのぞき込んだ。
蜘蛛の糸が数本張っている。
まるでクモの糸は外敵をからめ取るほどの太さだった

薄暗いものの湿気はなかった。
この中に霊魂とやらはいるのだろうかとトモは瞳を大きく見開いたがそれらしい気配は感じられなかった。

 

現世との手段

 

中は両端にブロックが置かれていて、その上にコンクリートの受け板が渡してあった。
四個の骨壺が乗っている。
伸太の骨壺が真ん中で伸吉の両親の骨壺が見守るように左右に置かれている。

母親の骨壺の隣にその他の先祖の遺骨を合葬した骨壺が置かれていた。

「俺たちもやがてここに入る」
伸吉はそう言いながら伸太の骨壺を少し後ろにずらした。
「学二が所帯を持つまでは来られないよね」
トモは納骨室の埃を掃き出し始めた。

伸吉は伸太の骨壺の前に出来た空間にラップしたノートパソコに太陽電池から引きこんだコネクターを差し込んだ。

作業をしながら果てしてこんな事で死者と交信が出来るのだろうかという心許なさと霊魂が段々と押し寄せて来るような予感が交差し神妙な気持ちだった。

 

「誰も見てないだろうね」
トモは時々そう言いながら辺りを見渡した。
「気になるか?」
セットし終えた伸吉が額の汗を腕の先で拭き払って顔を上げた。
「そうじゃないけど。説明するだけ面倒だもん」
「どう説明する」
「伸太が帰ってくるって言うさ。これはそのための装置だからね」
トモが小さく笑った。
「本当の事を話しても、誰も信じてはくれないだろう。この夫婦この暑さで頭が変になったと思われるだけだ」

伸吉は自分の頭の上に手を上げてくるくるっと回して見せ額の汗と一緒に目尻に溜まった涙を右腕で拭き払った。

「他人にどう思われようと気にする歳ではない。伸太と交信が出来るならどんな人の目も気にはならない」
トモはしゃがみ込んで伸吉の手元を見つめている。

 

「設定はこれで大丈夫」
点検を終えた伸吉はノートパソコンのスイッチを入れた。
液晶画面に初期設定の表示が表れた。続いてインターネットへの接続用ファイルが起動した。

後は自動セットアップの指示通りに、キー操作を繰り返せば良かった。
「本当に出来るような気がしてきた」
トモは伸吉のキー操作で次々に変化して行く画面に感動している。

 

水は流れる

 

二人には細い水路を水が音もなく流れて行くように今まさに、霊魂がノートパソコンの中にひたひたと流れ込んで来ているような気配がした。

伸吉が蓋をした納骨室の前をトモは掃き清めながら、
「不思議な気分だ」
と言い涙をぬぐった。

 

近頃トモは若い頃のような豊かな感情を見せる時があった。
「長い間、旅をしていた息子がようやく帰ってくる。玄関先で出迎える気分だ」
感情の高まりに伸吉の声も少し震えていた。

「成功すればその通り。天国から帰ってくるんじゃもんね」
妻の声がうわずっている。
「成功してもらいたいね」
開(ひら)けた東の空間から熱波が竹林に向かって吹いている。
強烈な真夏の光のなかには日向灘の香りがまじっていた。

 

家に帰って見るとハウスメーカーから次の現場の工程表が母屋のファックスに入っていた。
伸吉はそれにはざっと目を通しただけで庭先の作業場兼事務室のドアを開けた。
伸吉はすぐにデスクトップパソコンの電源を入れインターネットを立ち上げた。

杉本伸太@universe.……

接続まではほんの何秒だった。

 

デスクトップの画面にメールは届いておりません。と表示された。
「これ納骨室に接続しているの?」
「そうだ」
トモの目が潤んでいた。
「やって見ろよ」
伸吉に促されてトモはキーボードの前に座った。

 

ご め ん ね、一字一字右手の人差し指と中指でかみしめるように象牙色のキーを打ち込み深く息を吐いた。

「たった、これだけ?」
と伸吉が顔を向けるとトモは無言で軽く頷いた。
伸吉がマウスで送信のコマンドをクリックした。

 

パソコン本体がしばらく機械的な音を立てやがて画面に送信完了の文字が表示された。
「成功だよ。俺たちの執念が必ず伸太の霊魂に通じる」

「ごめんね」
握りしめたタオルの端で何度も目頭を押さえながらトモは声を詰まらせながらパソコンの画面を見つづけている。

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