小説ブログ【発見 砂の穴第2話 お染】

 

小説ブログ書き方実例【砂の穴第2話 お染】をふくめ、ブログに投稿する短編小説は、400字原稿用紙40枚前後です。
文字数16000字ぐらい。この文字数を大まかに区切りのいいところで6等分します。
一編の文字数があまり多くなると、読者のすき間時間を余計に奪ってしまうという配慮からです。

砂の穴第2話 お染あらすじ

源太郎は職場の不燃物処理場で不法投棄の猫の死体を見た。
定年後源太郎は、散歩の途中に公園で捨て猫を拾って、自宅につれかえった。

 

 

お染

 

猫の不法投棄

 

源太郎は一年前まで、M市の不燃物処理場の所長をしていた。
「所長、ちょっと来て下さい」
定年を間近にしたある日の午後、一人の作業員が所長室に飛び込んできた。
「どうした?」
「猫が何匹も捨てられているんです」
「何匹だ」
「さあ。まだ袋を開けていないので分かりません」
源太郎は若い作業員の後について行った。
「どうして猫だと分かった?」
源太郎は作業用の軽トラックの助手席に乗り込みながらたずねた。
「泣き声です」
「生きているのか?」
「はい。泣き声が聞こえますから」
「そうだな」
源太郎は力無く呟いた。未舗装の作業道で軽トラックは左右に大きく揺れる。話す度に声が喉の奥で途切れた。

このゴミ最終処分場には、市の全域から一日に二百台を越える車両がやってきて、あらゆるゴミや不要品を捨てて行く。入り口の受け付けで車検証を確認したり、内容物の聞き取り調査はしているが完全ではない。
作業員達は不審物の不法投棄に絶えず目を光らせているものの、野球場のように広い処理場を数人では完全に監視出来ない。

ショベルカーの停止している現場には、すでに数個の黒いゴミ袋が一カ所に集められ、そばに二.三人の作業員が集まっていた。
「開けますか?」
所長が軽トラックの助手席から下りてくるのを見ながら一人の作業員が声をあげた。
作業員達は鉤状になった鉄筋棒を、何本か用意している。源太郎は黙って頷いた。
一塊りにされていた黒いビニール袋が次々に引き裂かれていった。
中からぼろ布のような大小の猫の硬直した死骸が転げ出た。

源太郎は異臭を避けるようにして、風上に動いた。
「むごいことをするな」
源太郎は思わず目をそむけた。

 

小動物の死体が捨てられて行くことは珍しくない。しかし、これほどまとまった数が捨てられたのは、源太郎がここに赴任してきてから始めての事だった。
「全部で一八匹です」
「個人で飼うにしては、多すぎないか」
源太郎は本庁に連絡すべきかどうかまよった。

「こいつ、まだ生きています」
作業員の一人が体をのけぞらせるようにしながら、鉤棒を源太郎の足元に近づけた。先端に小さな綿くずのような物がぶら下がっている。鉤棒を少し動かすと、今にも途切れそうな泣き声をあげた。

源太郎は作業員達に向かって、死体を山際に穴を掘って埋めるようにと指示し、足元の段ボールを拾い上げると、その中に弱々しい子猫をつまみ入れた。
「どうするんですか」
軽トラックの荷台に段ボール箱を積み込む所長に向かって、運転する作業員がたずねた。
「死んでるものと一緒には出来んだろう。しばらく上で様子を見るよ」
源太郎はそう言って、弱り切った捨て猫を所長室の裏庭まで運んで行った。定年直前になって、些細なことでも本庁と面倒を起こしたくなかった。

 

お染発見

 

「お染……お染」
源太郎の猫の名を呼ぶ声が、今朝も部屋から聞こえていた。起き抜けの声には張りがなく悲しく聞こえる。
二年前に妻を亡くし、定年を迎えた源太郎は、まだこれから先の生き甲斐を見出せないでいた。それでもこのごろは、お染がそばにいてくれるので少しは気持ちを紛らわすことが出来るようになっていた。

お染は純白の毛に包まれた雑種の子猫である。一週間ほど前、近くの公園のベンチ下で雨に打たれ、ぶるぶる震えていた。散歩で通りかかった源太郎が気づいて抱き上げると、以外にも柔らかで暖かな鼓動が手に伝わってきた。

「ニャアー、ニャアー」
抱き上げた両手の中で、悲しそうな泣き声をあげる子猫に、源太郎は哀れみを覚えた。このまま置き去りにして帰る勇気はなかった。
「亡妻が連れてきたのかも知れん」
源太郎は捨て猫の頭を撫でながら、つぶやいた。

源太郎はこれまで一度もペット類は飼ったことはなかった。定年の少し前、職場でちょっとした猫騒動が起きた時に、瀕死の猫に触れたことはあったが、子猫がこんなに可愛いと感じたのは初めてだった。
お染と名付けたのは、全身の純白の毛が何ものにも染まらないようにとの願いを込めて命名した。

 

公園から連れ帰って半日ぐらいは、ぐったりとしていた。時折、弱々しい泣き声をあげたるのが精一杯のようであった。牛乳を少し温めて、赤いスプーンにすくって与えた。体をきれいにふきあげてやった。源太郎にとって久しぶりに味わう充実した時間だった。

 

夕方になるとお染は、徐々に元気を取り戻し始めた。その晩から源太郎はお染を一緒の布団に入れ、抱いて寝た。絶えず喉の奥をゴロゴロ鳴らしている。抱いていると胸元にひっそりと温もりを感じた。源太郎は、二年前に子宮ガンで亡くした妻の肌の温もりを思い出した。

お染に元気が出てくると、源太郎はお染がいつか逃げ出すのではないだろうかと、落ち着かなくなっていた。濡れ縁の下のわずかな空間で盆栽の手入れをしていても、お染の逃げ出して行く姿が想像された。
気を紛らわすように、さっきすったばかりの煙草の残り半分を、煙草ケースから取り出して口にくわえることが最近多くなった。

「ニャアー」
「どこに行っていたんだ?」
「ニャアー」
すっと足音も立てず、どこからともなく帰ってきたお染は、源太郎の足元に身をよじりながら甘えて見せる。
「車に跳ねられたらどうする」
お染に元気がもどってくると、源太郎には新たな心配が加わった。

 

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