ブログ小説【愛しのメールアドレス第3話 異国の出会い】

小説ブログの書き方実例編 【いとしのメールアドレス第3話 異国の出会い】をよんで、自分ならこう書くとイメージしてみてください。

自分は1話2000字前後を目安にして、一編の短編小説を6話で終わるようにしています。

短編小説の書き方のノウハウはネットでもいろいろありますが、実際に自作を発表して実例にしていることはすくないようです。

第3話 異国の出会いあらすじ

毎年、伸太の命日には大勢の同級生たちが仏前や墓参りにきてくれた。同級生の詩乃はスリランカ人の男性と結婚して異国で生活するようになった。

スコールの午後詩乃は道路を歩いている伸太の姿をみたような気がした。

 

 

異国の出会い

 

 

同級生

 

葬儀の日、クラス全員が家の前の狭い道路に並んで、伸太の霊柩車を見送ってくれた。

翌年から命日になると同級生たちは、グループを組んで仏前や墓参りにやってきた。
その集まりは夏の終わりのちょっとした同窓会のようなもりあがりになっていた。

 

「いらっしゃい」
「あら、誰かと思った」

家の前の狭い道路を通って、墓に向かう高校の制服を着た男女の一団のはしゃぎ声が聞こえる。

伸吉とトモはそうした姿をまぶしそうに目を細めながら見送っていた。
一年前の中学生とは別人のような大人に見えた。

「お父さん……お母さん」
はち切れそうな若者たちの中から、少し甲高い伸太の声が聞こえたような気がした。
もしかしてその中に伸太が紛れ込んでいるのではないかと思い、トモは集団のなかを何度か盗み見た。

伸吉も背伸びするような格好であちこちに固まりになって歩いている若者たちの姿を目で追っている。

 

中学校の卒業式が終わった日の午後、墓前で「杉本君、どうか天国から私たちを見守っていて下さい」
と手を合わせた詩乃は、二十五歳の早春に、リアナゲと呼ぶスリランカ人と結婚した。

リアナゲは宮崎の大学を卒業し、福岡の貿易会社に就職していた。
その頃詩乃は高校卒業後、貿易会社に事務用品を納入する博多の会社で働いていた。

 

「僕、宮崎の大学で勉強しました」
詩乃が宮崎出身だと知ったリアナゲがある日声をかけてきた。
リアナゲのその一言が二人を近づけた。

 

詩乃の実家は大学まで自転車で十分ほどの距離にあった。
話しているうちに、二人のその頃の生活圏は重なりあっている部分が多いことがが分かった。

おなじコンビニで買い物をし、おなじコインランドリーに出入りしていた。
リアナゲが母国への便りを投函していた郵便局と、詩乃がペンフレンドへ出す手紙のポストもおなじ郵便局だった。

 

二人は急速に親しくなった。
翌年、宮崎の割烹でささやかな結婚式を挙げた。
割烹の庭に木蓮のつぼみが膨らみ始めていた。

 

コロンボ

 

リアナゲの母国への転勤で詩乃は三年前からコロンボに住んでいる。
両親や親しい友人たちは詩乃が政情不安な異国への渡航に反対した。

「限られた地域の争いですから心配ありません。僕たち向こうで五年間仕事をしたら、また日本へ帰ってきます。本当です」
心配する詩乃の身内に向かってリアナゲは一生懸命に訴えた。

 

リアナゲが勤務する母国の会社はスリランカ最大の紅茶の貿易会社だった。
繁華街から少し離れた地区にある英国風の家には家政婦いた。
詩乃は漠然とではあったが、スリランカという国に興味を抱いた。

 

「おや?」詩乃は小さな声を上げた。
すっかりサリー服が身についた詩乃はテラスから庭に出て表通りに目をやった。
こちらへ来て四年が経つが、胸騒ぎを伴った驚きを経験したのは初めてだった。

 

外は小一時間ほど続いた激しいスコールが、つい先ほどやんだばかりだった。
庭を隔てた通りの菩提樹の周りにはまだモヤが這っている。

そのモヤの中から一人の少年が姿を現したのだ。
開襟シャツに半ズボンの少年は、手にカゴを下げている。
近くの小川で魚取りをした帰りかも知れないと詩乃はおもった。

この辺りの子供たちは良く働く。五歳ぐらいから小川での魚取りや、里山での山菜取りをしている姿を、詩乃はこれまで何度も目にしていた。

詩乃が、おや?と呟いたのは、雨上がりの濡れた道路の中央を歩いている少年の姿が、伸太そっくりに思えたからだった。

 

小学校、中学校を通して同級生だった伸太がこの世を去ってから、すでに10年以上が経っている。

いまの詩乃の日常生活の中で伸太の存在が蘇る事は殆どなかった。
異国の地で遠い故郷を思い出す時にも伸太の影はなかった。

 

普段の生活の視界から消え去った少年が、十年以上前の伸太に重なって見えた事に、詩乃の心は動揺した。
「何故?」

 

今の詩乃に思い当たるようなものは何もなかった。
喉の奥に棘の刺さったままのような、不快で息苦しい日が何日か続いた。

 

夕方、勤務を終えて帰宅した夫に話そうと何度か思ったがつい言いそびれる。
詩乃はそんな時、異国での孤独をおぼえた。

 

ガル・ヴィハーラ涅槃仏

 

故郷宮崎の聡史(さとし)から電子メールが詩乃に届いたのは、心の苦しさから逃れようとして、コロンボ国立博物館に行った日の午後だった。

 

近状報告のなかに、今年も伸太の命日に十数名の同級生たちと連れだってお墓参りをしたことがそえられていた。

聡史とは高校からは別れたが小学校、中学校を通して一緒だった。
秀才肌でいつも冗談をとばしながらまわりの同級生たちを笑わせていた。

 

博物館にあるガル・ヴィハーラの涅槃仏を一度は見たいと思いながらこれまで行く機会がなかった詩乃は、今朝、夫を見送った後すみわたった南国の青空を見あげている時に行って見ようと決心した。

 

博物館には黄金に輝く座像や極彩色の壁画などこの国を代表する数々の宝物が展示してあった。
横臥姿の穏やかな涅槃仏の表情は詩乃の苦しみや悩みをそっと取り除いてくれそうな気がした。

 

外国からやって来た旅行者の一行が通り過ぎるのを待って、詩乃はレプリカの涅槃仏の前に立ち停まった。
「ごめんね」
その慈悲深い微笑みを見つめていると一人でに言葉が口をついて出た。
涙が頬をつたわった。

スコールの後に見た伸太の幻影は、聡史のメールが届く前兆だったのだと詩乃は思った。

今日の午前中にガル、ヴィハーラの涅槃仏の前に導いてくれたのも伸太だったように詩乃には思えた。

 

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