ブログ小説【発見 砂の穴第6話 娘の訪問】

ブログ小説とアイキャッチ画像

アイキャッチ画像はブログの内容をイメージさせる役割があります。
自分はブログ小説の主題とタイトルだけで構成しています。
Photoshopで背景色を選びそこに主題とタイトル文字を書きれています。
このブログの場合、ブログ小説書き方実例編 タイトル砂の穴 という具合です
主題とタイトル文字だけではチョットしまりが足りない気もしますので、万年筆だとかキーボード、メガネなどの添景をいれています。
Photoshopではなくて、無料の画像編集ソフトもいろいろありますので試してみてください。

第6話 娘の訪問あらすじ

源太郎をはねた娘が焼香で八郎の家をおとずれた。
相手をした秋子は、娘からお染とは別の猫について思わぬ話しを聞いた。

 

娘の訪問

 

クローン

 

「見ろよ。やっぱりお染だ」
「コピーよ、これ」
秋子は眠い目を何度も目をこすりながらいった。
「コピーだって。今流行のクローンか」
素っ頓狂な声をあげて、喜ぶ八郎。

 

「絶対に、こんな所に居る筈がない」
秋子は通夜の、あの一瞬を思い浮かべながら、少し強い調子で言った。
「この体型、毛並み、間違いなくお染だ」
煙草の箱を捕獲器に近づけると、中から足を伸ばして爪で引っ掻こうとする。
「馬鹿げてる。夢の中の猫を捕まえるなんて」
「正夢だったんだ。なぁ、お染」
八郎は顔を近づけて、機嫌良く呼んだ。

 

「ニャアー」
「ほら、答えたぞ」
彼は満足そうに笑みを浮かべた。
「お染」
「ニャアー」
自分の呼びかけにも、同じように悲しそうな泣き声を上げたこの得体の知れない猫に、秋子は目を据えた。眠気がいっぺんに吹き飛んでいった。

 

「おじいちゃんに、線香を上げさせて下さい」
秋の深まったある日の午後、生花を抱いた十九歳の娘が玄関先に立っていた。娘が家をたずねて来たのは、葬儀後これが二度目だった。最初の時は秋子が家を留守にしていて八郎が応対した。その時はお互いに緊張していて話らしい話もせず、娘は仏壇に線香を上げただけで帰って行ったと、後になって八郎は話していた。
「どうぞお上がり」
秋子は娘を和室の仏間につれていった。

 

娘の疑問

 

「お染ちゃんは?」
源太郎の仏前に線香をあげ終えて一段落した娘は、小声で秋子にたずねた。
「行方知れずよ。ずっと」
「私、おじいちゃんの通夜にお染を連れてきたんです」
「お葬式の時にも、そんな話していたわね」
秋子は心の中で、よけいなことをしてくれたものだと思った。
「今日、会えるのを楽しみにしていたんです」

 

「猫、好きなのね」
「私が高校生の頃は、家に二十匹近くいました」
「まあ―」
秋子は不安な気持ちで次の言葉を待った。
「それがある時、全部死んでしまって…」
「食べ物か何か?」
「何が原因だったのか、父は話してくれませんでした」
「どうしたの?…死んだ猫」
「父が捨てました。黒いゴミ袋に入れて。入れるの、私も手伝わされました」

 

秋子はM市のゴミ捨て場に多くの猫が捨てられていた話を、生前の源太郎から聞いたことを思い出した。頭数も娘の話とほぼ一致する。
「おじいちゃんね、ゴミ処分場で働いていたのよ」
娘の表情が緊張した。
「父はそこに捨てに行ったと思います」
秋子の口元を見つめていた娘は、顔を仏壇の方に向け、しばらく線香の紫煙に視線をやっていた。

 

「その頃、捨て猫の話、していたわ」
秋子はさり気なく言った。
「本当ですか」
娘の声は小さかった。
「その中にまだ一匹だけ、生きた子猫がいたそうよ」
台所に立って、冷蔵庫の中の飲み物をとりだして用意しながら、秋子はさり気なく言った。娘の緊張した様子が背中に伝わってくる。

 

「全部、死んでいた筈ですけど」
「亡くなったおじいちゃんね、その猫を事務所で飼っていたのよ」
アイスコーヒーのグラスを娘の前のテーブルに置いた。
「今は飼ってないの。猫?」
娘は黙ってうなだれている。

 

 

「あれ以来、生き物は飼わないようにしているんです」
軽く会釈して、ストローをグラスに泳がせている娘の指先を眺めながら、
「しばらくして猫に赤ちゃんが産まれたの」
と秋子は薄く笑った。
「‥‥お染だったんですか?」
唇からストローをはずして、娘が顔を上げた。

 

「いいや。おじいちゃんは子猫が産まれてすぐ、定年退職でゴミ処分場を去ったわ」
娘はほっとしたようだった。

「お染は公園にいた、ただの捨て猫」
秋子は曖昧な返事をした。娘にお染の話をこれ以上続けるのは、何となく気が進まなかった。
「お墓に寄せて頂いて、いいですか?」

 

「墓地、知ってるの?」
「はい。葬式の時、後ろの方で参らせてもらっていたんです」
秋子は娘が葬儀の日、墓地にまで行っていたとは知らなかった。
「どうぞ、おじいちゃん喜ぶわ」
娘は玄関に出てきた秋子に軽く頭を下げると、事故後乗り換えた赤い乗用車で、道路に散乱している枯葉を巻きあげながら走り去った。

 

八郎の記憶

 

胸の奥底に、岩石のような重石をしていた古い記憶が、ここ数日来、ジワッとしみ出て来ているのを八郎は感じていた。

 

八郎は小学四年生の頃、猫について嫌な思い出を持っていた。源太郎が死んでから夜中にたびたび悪夢を見るようになり、彼の古い記憶の中の猫が、小声を上げながら迫ってくるような気がした。秋子にはお染が現れたと言っているが、お染に交じって、八郎が子供の頃出会った子猫が、枕元に現れていた。

 

八郎が小学生の頃、源太郎は営林署の職員だった。一家は山麓の谷川に面した官舎に住んでいた。谷川の向こうには営林署の貯木場があった。
昭和二十四・五年頃は、日本各地から職を求めて伐採、炭焼き、運搬、植林に従事する集団が、貯木場の横を通って、谷間の急造の村に次々とやってきた。大部分は戦後、外地からの引き揚げ者とその家族達だった。

 

川向こうの山師の子供達のために、歩いて四十分ほどの山奥に、小・中併設の分校が建てられていた。八郎は四年生の時、一年間だけ、分校に通よった。

分校までの山道は、照葉樹林の森がくねくねと蛇行しながら続いていた。深い谷の向こう側には、山奥で切り出した材木を運搬するためのトロッコ道が見え隠れしている。

 

営林署近くから分校に通っている子供達は、谷向こうのトロッコ道を通学すれば、いつもの山道を通うよりも十分や十五分は近道出来ることを知っていた。
「あそこはな、材木を満載したトロッコがすごい勢いで走り降りてくるんでな、絶対に通ったらいかんぞ」

 

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