小説ブログ【発見 砂の穴第1話 墓地改葬】

 

小説ブログの書き方実例編 【砂の穴第1話 墓地改葬】をよんで、自分ならこう書くとイメージしてみてください。

自分は1話2000字前後を目安にして、一編の短編小説を6話程度で終わるようにしています。

短編小説の書き方のノウハウはネットでもいろいろありますが、実際に自作を発表して実例にしていることはすくないようです。

砂の穴第1話 墓地改葬あらすじ

土葬を火葬に改めるために夫の両親の土葬体をを彫り上げることになった。
妻の秋子に義父の棺桶にある不安を持っている。
棺桶が掘りあげられることによって、いままで隠していた秘密が暴かれるのではないか。

 

墓地改葬

 

来春から、村の墓地が改葬されるのに伴って、これまでの土葬を火葬に改めるという内容の回覧板を、隣家の男の子が届けてきたのは、八郎の父源太郎が死んで半年後のことだった。

読んでみると、この秋に今まで土葬にしていた遺体や遺骨を一度全部堀り上げて、村合同の火葬を執り行うとの文面だった。日程は今度の土曜日・午前9時作業開始となっていた。
「こんなことなら、おじいちゃん始めから火葬にしておくべきだった」
長男の嫁の秋子は回覧板をテーブルの上に投げ出しため息をついた。最近では義父の源太郎の記憶が徐々に薄れていて、心が安らぎ始めていた矢先の時だった。

 

「村の年寄りの話では、死後一年ではまだ生身だそうだ」
回覧板にざっと目を通した夫の八郎は、実父の死体をまるで他人事のように無感動な声で言いながら、秋子の横のイスに腰掛けた。
「やめて」
秋子は八郎の生温い吐息を首筋に感じて乳房や背筋に鳥肌が立った。

「俺、日曜日以外、休めないよ。ほれ、こんな不景気な時だろう」
言い終わった後、声には出さないで笑っている。結婚以来、何度か見せつけられて来た夫の卑怯な態度だ。
「あなた、自分の父親よ」
つい、トゲのある言葉が口をつく。
「そうだけどさ」
現実から目をそらすように夫の視線はテレビに向けられている。
「いいわよ、どうせ掘り上げなければならないのなら、私一人でやるから」
秋子は夫の煮え切らない態度に、苛立ちを込めて言った。八郎は何も答えず、お笑い番組に愛想をくずしている。

 

強がりを言ったものの、源太郎のお棺を掘り上げるとなれば、秋子には一つの不安があった。生前、源太郎が可愛がっていた子猫のお染が、一緒に棺桶の中に横たわっている。そのことは秋子以外、誰も知らない。秋子には思い出したくない情景だったが、先ほど八郎の吐息が頬を滑って行くのと同時に、異常に顔面の膨らんだお染の姿が脳裏を横切ってゾッとした。

 

埋葬遺体掘り起こし

 

その夜、秋子は何度も寝返りを打ちながら幻覚にうなされた。睡魔はあるのだが頭の中は次々と幻覚が波打っていている。

早朝から真夏のような太陽が照りつける中で、墓堀り人によって墓掘り作業は黙々と進められている。すでにあちこちの墓で、遺骨が掘りあげられている様子であった。
死後何十年も経過して、もう骨の消滅した墓地では、カラッとした表情の遺族達が、墓前で簡単な仏事をするだけで引き上げていったが、まだ遺骨の残っている墓からは、墓掘り人が遺骨を新聞紙に拾い上げてきて、遺族の前に広げている。広げられた遺骨は驚くほど白く乾燥していた。

この一帯の墓地では、土葬の穴掘りの時に、珊瑚礁の欠片や貝殻がよく出た。水はけのいい砂地のため、朽ち果てた遺骨は、どれもさらっとした感じだった。
墓地のある高台は大昔は海底だったと、源太郎の埋葬の時、村人が話していたのを秋子は思い出した。

まわりの墓地からは線香の煙りが立ちあがっている。
「南無阿弥陀仏。ナムアミダブツ」
墓前にうずくまっている八郎と秋子の背後から、低く地を這うような念仏が聞こえてきた。振り向くと、いつの間にか源太郎の姉が、墓のそばにしゃがみ込んで手をすりあわせていた。

「仏さんを、今上げるからな」
墓穴の底から声がした。八郎が黙って頷く。

墓穴の上に組まれた三本柱のやぐらがギシッと軋んだ。滑車につるされたロープがゆっくりとまわり始める。担架に乗せられた棺桶が、アルミ梯子をあがってくる墓掘り人に支えられながら、徐々に姿を現した。

 

最初に上げられてきた棺桶は、源太郎より二年前に病死した義母のものだった。すでに上蓋が腐り始めている。墓掘り人がスコップの先で上蓋を持ち上げると簡単に開いた。
「あっ」
秋子は小さな声をあげて目をそらしたが、義母の姿がはっきりと見えた。

義母の顔は溶解が始まっていた。白い骨の一部がのぞいていた。頭髪も灰色の脱色が認められる。衣服の下に隠された肉片はもうかなりの部分溶け出しているのだろう、まったく膨らみがなかった。秋子は夫の顔を見た。

「思っていたよりもきれいで、清潔だ」と夫の八郎がつぶやいた。
義母の上蓋が閉じられた。

「もう一体上げるぞ」
墓穴から声がした。やぐらのロープが動き始めると、悲鳴のような軋みが尾を引いた。
源太郎の棺桶は義母のと違って、半年前に埋葬したものだ。地上に姿を見せた棺桶は水々しく光っていた。このところ降り続いた長雨のせいだ。上蓋はスコップの先で二、三度こね上げなければ開かなかった。

秋子が源太郎の屍体を目撃したのは一瞬だったが、鮮明な残像が脳裏に焼き付いた。義父の頬は、ほんのりと桃色だった。両手を胸に組んでいた。着衣に乱れはなかった。和服の深い緑色はまだ退色は始まっていなかった。むしろ屍体の脂肪を含んで、深緑が鮮やかに浮き立っている様に思えた。

 

異変

 

「八郎さん。中に何か動くものがいるぞ」と墓掘り人が言った。
「ニャアー」
お染の泣き声だ。秋子の幻覚は頂点に達した。
「秋子!どうした」
八郎は激しく悶え苦しむ秋子の声に眠りから覚め、肩を揺すった。
「お染が」
放心して荒い息づかいの収まらない秋子。
「怖い」
秋子は夫の体をしっかりと抱きしめて眠りに就こうとしたが、びっしょりと汗をかき全身の震えが止まらなかった。

 

 

ライトノベル

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